アンテナ回路4

アンテナ回路と同調回路の間に付加する装置(ウェーブトラップ、アンテナカプラ)の話題です。

ウェーブトラップ

混信を低減する(分離を高める)手段として、ウェーブトラップを用いて妨害電波を除去する方法があります。 ウェーブトラップの構成部品は同調回路と同じく、コイルとコンデンサーであり、並列共振、直列共振を利用したフィルタ回路です。

例えば、図1(A)の並列共振回路の場合、共振周波数を混信局に合わせることで、回路のインピーダンスを最大にし、混信電波の通過を阻止します。他の周波数(受信希望局)に対しては、回路のインピーダンスが低いことから、ゲルマラジオに電波(高周波信号)が伝わります。 すなわち、バンドエリミネーションフィルタ(帯域阻止濾波器、BEF)として作用します。

図1(B)の直列共振回路の場合では、共振周波数を受信希望局に合わせることで、回路のインピーダンスを最小にし、希望電波を通過させます。 他の周波数(混信局)に対しては、回路のインピーダンスが高いことから、ゲルマラジオに電波(高周波信号)が伝わりません。 すなわち、バンドパスフィルタ(帯域通過濾波器、BPF)として作用します。

ウェーブトラップの一例
 図1 ウェーブトラップの一例

以上がウェーブトラップの基本形です。 並列共振と直列共振のどちらが効果的かは、ケースバイケースです。 そのほか、これらを組み合わせた回路も多種存在します。 図1(C)のウェーブトラップ回路は、L1とVC1で混信局に同調し、L2とVC2で受信希望局に同調させて使用します。

アンテナカプラ

音量を増やす(感度を高める)手段として、アンテナカプラを用いて損失を減らす方法があります。 アンテナ回路と同調回路のインピーダンスが異なる状態(ミスマッチ)で接続された場合、アンテナ回路から伝わった電波(高周波信号)の一部が同調回路に入力されずに反射してしまい、損失(ロス)が生じます。 そこで、アンテナカプラによって、アンテナ回路と同調回路のインピーダンスマッチ(整合)させることで、信号の反射を防ぎ、電波を効率よく受信できるように改善します。

アンテナカプラはアンテナチューナーとも呼ばれており、コイルとコンデンサーで構成されます。 回路構成として、T型、π型などがあります。

アンテナカプラの一例
 図2 アンテナカプラの一例

使用例は少ない?

実際のところ、独立した装置としてアンテナカプラやウェーブトラップを、ゲルマラジオに追加することは稀だと思われます。 追加されない理由として、アンテナ回路と同調回路のインピーダンスマッチや共振特性は、
 ・アンテナコイルの巻き数
 ・アンテナコイルと同調コイルの距離や角度
 ・同調コイルにアンテナを接続する場合のタップ位置
 ・結合コンデンサーの容量
などを変化させることで調整可能であり、適当な受信特性(感度と選択度のバランス)に設定できるからだと思います。 そのほか、ゲルマラジオを初心者向けとして扱うことで、
 ・部品が増えると費用や製作難易度が上がる
 ・アンテナのインピーダンスが分からず、カプラの設計が難しい
 ・アンテナとアース自体を改善する方が、費用対効果が大きい
という事情も理由に含まれると思います。 しかし、ゲルマラジオの一部には、アンテナカプラやウェーブトラップを同調回路と組み合わせて一体化し、高性能機として1台のラジオに仕上げられている例もあります。



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