AM・SW・FMゲルマラジオ

エアバリコン
AM用2連・FM用3連のエアバリコン

以前、秋葉原でバリコンを探したところ、5連のエアバリコンを発見しました。 店主の説明ではAM用2連・FM用3連の新品で、良心的な価格を提示してくれました。 即座に「多バンド受信が出来るゲルマラジオを作ろう」と決意し、購入しました。 後日、デジタルマルチメーター(MATEX M-3870D)で測定したところ、AM用は330pF、FM用は23pFでした。

5連エアバリコンを使う受信回路を色々と考えてみます。 まず、中波放送(AM)の受信は欠かせません。 AM用バリコン1つと同調コイル250μH程度の組み合わせで放送範囲をカバーできそうです。 多バンド受信となると、次に短波放送(SW)が思い浮かびます。 FM用バリコン1つに85μH程度を組み合わせると、3.6〜8.6MHzをカバーするようです。 ここでコイルをもう一つ用意して10MHz台を受信しようかと思いましたが、FM放送の受信に成功した現在、やはりFMを外すわけにはいきません。 再現性の良さと安定した性能を期待してFCZコイルを使いたいので、FM用バリコンを2連直列にして同調回路を構成することにします。 FMの復調回路はワイズ検波です。 これはフォスターシーレーより出力が大きいという情報を頂いたことから採用したものです。

回路図
AM・SW・FMゲルマラジオの回路図。アース記号の実態は、エアバリコンのステータ(ボディ)です。

同調コイルには、トロイダルコアとリッツ線を使用することにします。

トロイダルコアはアミドン社製で、材質は#2(カーボニル鉄粉コアで0.25〜10MHz用。表面は赤に着色)、中波用にコアサイズT200、短波用にコアサイズT130を準備しました。また、リッツ線は、φ0.08mmの素線が30本織り合わさったものを使います。 購入したリッツ線はUEW(ウレタンエナメル線)と同じく、特に被覆を剥がさなくても、ハンダ付け作業をすれば被覆は焼失してハンダ付けできるので便利です。 トロイダルコアの穴にリッツ線を通す際は、線材をコアに擦らせて被覆を痛ませないこと、ねじれ(キンク)を発見したらすぐに取り除くこと、コア全体を均等に巻くように注意しました。 今回、T200に144回、T130に88回巻き、途中で適宜にタップを出しています。

トロイダルコイル
巻き終えたトロイダルコイル

AM、SWの検波回路は、4回路3接点ロータリースイッチの
端子に配置(画面は製作途中のもの)

FMも聞ける3バンド・ゲルマラジオ

ケースには100円均一ショップで売られていたミニコンテナ(約146×178×87mm、ポリプロピレン製)を使用しました。

受信には、いつものとおり、室内アンテナと水道管アースを利用します。 まず、AMは中波放送帯を全てカバーし、地元局も十分な音量で受信できました。 SWは残念ながら、選局するような感覚は乏しく、フェージングを伴い色々な局が混信してしまう有様です。 昼間はラジオNIKKEIが受信できましたが、夜間は海外局で埋め尽くされてしまいます。

FMについては、FMトランスミッターを内蔵したMP3プレーヤー(株式会社グリーンハウス製 GH-KANA)を使用したところ、FM波の受信を確認できました。 ワイズ検波はフォスターシーレーやレシオ検波と異なり、同調回路の中間タップや復調用のコイルが不要な点は魅力的です。 ワイズ検波の性能ですが、クリスタルイヤホンで聞く限り、フォスターシーレーのFMゲルマラジオより低音が豊かですが、若干のひずみも感じ取られます。 部品定数を調整し、高音をもう少しハッキリ出したいところです。 音量は甲乙つけがたく、手元に十分な測定器がないため、現時点で出力Vp-pの比較は不明です。

AM・SW・FMゲルマラジオの外観
100円ケースにラジオを組み込みました。
加工も楽で、意外と気に入っています(笑)
AM・SW・FMゲルマラジオの内部
ケース内部の様子。もう少し、電線を
きれいに引き回せれば良いのですが・・・
トロイダルコイルの固定状況
トロイダルコイルの固定には結束バンドを使用。
金属を使用しないのはお約束。
基板の固定状況
FM復調回路の基板は、スペーサーで間を
空けて、バリコンにねじ止めしています。

中波と短波を受信できるゲルマラジオは多数発表されていますが、私が知る限り、FMを含んだ多バンド受信のゲルマラジオは見当たりません(2007年11月現在)。 市販のラジオでは、ごく当たり前の多バンド受信も、ゲルマラジオではすごく豪華な構成に感じられます。 特に今回は5連エアバリコンにトロイダルコア2個、リッツ線と材料費もケース以外は奮発しています。 AMは十分なアンテナとアースさえ準備できれば、若干遠方であっても受信できると思いますが、現在、FMの受信だけは放送塔の近辺に限られます。 もし、FM放送塔の近辺に在住していたらAM・SWだけでなく、FMも常時、このゲルマラジオで楽しめるのに・・・と、羨ましく思ってしまいます。