ループアンテナを使用したゲルマラジオ

ゲルマラジオ
糸掛けでエアバリコンを回転
白色のスイッチがSW1、赤色のスイッチがSW2です。
ゲルマラジオ
アンテナ端子はピンコネクタを利用

同調コイルを大きくすると、電波が直接コイルを通過する量が多くなり、アンテナとしても働くようになります。 この代表例として、ループコイルがあります。 ループコイルの定義は人によってニュアンスが異なるようですが、使用例を見渡すと多くの場合、本体の基板やケースに対して、概ねその半分以上の大きさを持ち、平面的に巻かれた構造のコイルを意味しているようです。 ループコイルを同調コイルとして用いると、前述のとおりアンテナとしても働くことから、ループアンテナと呼ばれています。 試作したゲルマラジオは、回路自体はオーソドックスですが、色々なループアンテナを接続できるようになっており、外部アンテナや対地アースが無くても受信できます。

回路図
ループアンテナを使用したゲルマラジオの回路図

ループアンテナは本体ケースに固定せず、分離しています。 接続にはピンジャックを使用し、本体のアンテナ端子は二系列(A1-E1系、A2-E2系)とし、接続スイッチ(sw1)を設けました。 バリコンは中古の二連エアバリコン(430pF×2)を並列接続しています。 バリコンを並列接続する長所として、コイルの巻き数を減らせるため、ループアンテナの製作が容易になります。 また、容量の変化が大きくなることから、コイルの巻き数が適正数より少々前後しても、中波放送の周波数帯域をカバーしやすくなります。 逆に短所は、コイルの巻き数が減ることで感度が低下する恐れがあることです。 しかし、巻き数が多くなるとコイル自体の電気抵抗も増えるので、一概に良いとも言えず、トレードオフの関係があります。 検波回路は、ゲルマニウムダイオード(1N60)を二本使用して倍電圧検波しています。 受信状況や接続するイヤホンの特性に合わせて、負荷抵抗の接続をスイッチ(sw2)で選択できるようにしました。

ゲルマラジオ
配線は立ちラグを使用

エアバリコンはアルミシャーシにねじ止めしています。 そのため、回路図に現れていませんが、エアバリコンのステーター側はシャーシアースされています。 また、立ちラグは中央の金具でシャーシにねじ止めされています。 結果として、この中央の金具にハンダ付けされているダイオード、抵抗器、E1・E2(写真の緑色の電線)もシャーシアースされています。 イヤホンジャックも直接、ケースにねじ止めしているため、端子の一方がシャーシアースされています。 ちなみに、シャーシアースは電波を受信する対地のアースとは意味が異なるので、非金属ケースを利用してシャーシアースが施せなくても、ラジオの感度には影響しません。

ループアンテナは、巻き方で性能アップ

ループアンテナの枠は、非金属製(木材、プラスチック、ダンボール等)が適していることから、角材(長さ90cm、12mm角又は15mm角)を使用しました。 使用した電線はベル線です。 ベル線とは、電話や呼び鈴、インターホン用の平行ビニール線で、被覆の内部は直径0.8mmの単線です。 大型のDIY店などでも売られており、入手が容易な電線です。 大型二次コイル付きループアンテナを除き、ベル線は1本に裂いて使用しています。

試作したループアンテナを表にまとめます。(2009/05/17 インダクタンスをLCメーターキットで再測定。画面をクリックすると大きくなるように変更)

名称小型密巻き大型密巻き大型スパイラル式大型スパイダー式大型二次コイル付き
外観 小型密巻きループアンテナ 大型密巻きループアンテナ 大型スパイラル式ループアンテナ 大型スパイダー式ループアンテナ 大型二次コイル付きループアンテナ
細部参考 ループアンテナの枠 ループアンテナの枠 ループアンテナの枠 ループアンテナの枠 ループアンテナの枠
1辺の長さ約32cm約63cm約62cm(最外周)約62cm(最外周)約62cm(最外周)
巻き数107121212
巻き具合ガラ巻きガラ巻き線間約10.6mm線間10.6〜18mm線間約10.6mm
インダクタンス106μH119μH141μH137μH143μH
平均出力約13mV約83mV約99mV約75mV約99mV

ガラ巻きとは緻密に巻かないことの通称で、同じ密着巻きでも、順序良く平行に巻いた場合より線間容量が減少しやすく、Qが僅かながら高まる効果があります。 スパイラル式とスパイダー式は、角材に15mm間隔で穴を開けて電線を通過させることで、線間を約10.6mm間隔にしています。 さらにスパイダー式は、互い違いに穴を開けた板も併用し、線間の平行性を排除することで線間容量の減少をより目指した試作です。 二次コイル付き大型ループアンテナは、A1-E1系、A2-E2系の両方に接続し、SW1をoffにします。

さて、性能を比較するため14km離れた5kW局を受信し、sw2はoffで平均出力をデジタルマルチメーターで測定した結果、大型スパライル式と大型二次コイル付きのループアンテナが最も性能が良い結果でした。 同じ大きさのコイルでも、巻き方で性能が異なることから、色々と工夫の余地がありそうです。

ループアンテナ式のゲルマラジオは、ボード交換式ゲルマラジオが必要するような、外部アンテナや対地アースを使用しなくても受信できる点が魅力です。 ループアンテナは指向性があり、電波を受信しやすい方向があります。 受信する際は、同調つまみだけでなく、ループアンテナの向きも調節します。

ちなみに、ゲルマラジオのループアンテナは、トランジスタラジオのバーアンテナに対して電磁誘導結合する方向に配置することで、トランジスタラジオの遠距離受信用の外部アンテナとしても利用できます。