バーアンテナ2個を接着したゲルマラジオ

書籍の紹介状況
この回路構成は、大正時代から評価が高い。
(「素人にも作れる無線電話の実験」より)

性能が高いとされているゲルマラジオとして、アンテナ回路を共振させる仕組みがあります。アンテナとアースの間に、コンデンサーとコイルを直列に挿入したゲルマラジオです。

国内の古い書籍(「素人にも作れる無線電話の実験」大正15年)では、「理論的にいっても、また実験上からいっても、押しも押されぬ高級装置」「鉱石式中稀にみる優秀なもの」と評しています。

また同様な回路構成の鉱石ラジオとして、既に倒産した会社ですが、アメリカ合衆国ミシガン州ベントンのヒース株式会社が「MODEL CR-1」というキットを販売していました。このCR−1とそのレプリカ機ですが、mixiの鉱石ラジオ・コミュニティで、その性能が高く評価されており、CRLも関心を持つようになりました。

アンテナ回路の共振で性能向上

ゲルマラジオは、アンテナでキャッチできた電波のエネルギーを超える受信音量は得られないので、アンテナ回路の性能は重要です。 本来、電波の波長に由来した寸法を採用することによって、アンテナ自体を共振させることが、効率よく電波を受信する秘訣と言えます。 ですが、AMラジオの中波では、仮に1000kHzだと波長λは300mもあり、アースと組み合わせてλ/4で受信するとしても75mが必要です。 多くの方は、これより短いワイヤーアンテナを使用していると推察します。

そこで、アンテナとアースの間にコイルとコンデンサ(バリコン)を直列に挿入することで、アンテナ回路全体を共振させる回路の登場です。

この場合、コイルとコンデンサ(バリコン)だけでなく、アンテナ、アース自体が持つ電気的特性も全て含んで共振周波数が決定されます。 そのため本来は、アンテナ、アースの電気的特性を具体的な数値として知っておくことが必要ですが、理論値はともかく、実際の値は測定器を使わないと確認は困難です。 そのため、使用するコイルやコンデンサの可変範囲を広くする対応が現実的です。 バリコンは360pFの2連式ポリバリコンを使用し、それでも容量が足りなければ、セラミックコンデンサ1000pFを追加することにします。

バーアンテナ2個を接着したゲルマラジオの回路図
バーアンテナ2個を接着したゲルマラジオの回路図
バーアンテナ2個を接着したゲルマラジオの外観
ケースはタカチ製SW-125。トグルスイッチは中間OFFになるタイプを使用。

瞬間接着剤でバーアンテナを結合

「市販のバーアンテナ2つを結合させれば、再現性も高く、製作も楽だろう」「コイルの加工は接着だけで完成」という単純な発想で作ってみることにしました。 バーアンテナ(PA-63R)を向かい合わせにして、瞬間接着剤を使用します。 これでアンテナ回路と同調回路は磁気的に結合します。

バーアンテナ2個を接着したゲルマラジオの配線状況
接着したバーアンテナ2個をラグ板に取り付けています。
端子単独状態直列状態
300μH367μH
233μH275μH
83.5μH93.7μH
91.5μH114.5μH
52μH62.7μH
7.9μH10μH

接着によって、フェライトバーの長さが変化するため、インダクタンスの変化状況を確認し、VC2の結線を決めました。

L1のタップは全て活用し、アンテナとアースはワンタッチターミナルで接続することにします。 赤と黒でしたら、やはりアンテナが赤、アースを黒としたいところです。 ワンタッチターミナルのボタン部分は、少しコツがいりますが、簡単に取り替えできるので、色の並び変えを行いました。

ワンタッチターミナルの分解方法
電線接続部にドライバーを差し込み、ボタンをマイナスドライバーで軽く引き上げます。
2本のドライバーを抜き取り、ボタンが本来の位置まで戻らない状態を確認します。
この状態から引き抜くように力を加えればボタンが本体から分離します。
ワンタッチターミナルの加工状況
ボタンを取り替えたワンタッチターミナルの状況です。
赤、黒、黒、赤の順が市販の状態です。

性能発揮には調整が不可欠

外部アンテナとして、16.6mのワイヤーアンテナを、アースには水道管アースを使って受信してみます。

結果ですが、VC1の可変で共振が得られるものの、VC1をショートした状態の音量と遜色がありません。 バーアンテナ2つを接着させれば、再現性も高く、製作も楽だろうと思って作ってみましたが、劇的な音量増加が無いという点で、性能は平凡です。 このようなコイルの組み合わせがダメなのか、使用したアンテナ、アースと相性が悪いのか、現在検討中です。 ひょっとすると、アンテナコイルだけでも十分に好条件な受信環境で、これ以上の向上は難しいのか・・・?

ちなみに先の古書では、「往々にして『よく聴こえない』といふ不平を聞きます。しかしそれは、聴こえないのではない『使ひこなし得ない』のであります。」と記されています・・・う〜ん、こっちの理由なのか!?・・・orz

バーアンテナ2個を接着したゲルマラジオの外観
バーアンテナ2個を接着したゲルマラジオの配線状況

なお、VC1側の容量ですが、ワイヤーアンテナの長さが短いほど容量が必要になります。 今のところ、使用しているワイヤーアンテナと実際に組み合わせてみないと、どれだけ容量が必要なのか解りません。 ちなみに、先のCR−1ですと、365pFのエアバリコン1台に、350pFのマイカコンデンサを2個まで並列できるような回路構成になっています。

また、先のCR−1ですと、ダイオードはタップダウンして接続しています。今回の場合は、L2の緑への接続に相当します。黒に接続したのは音量の大きさを重視したためです。音量が下がっても分離性能を重視するならば、タップダウンしてダイオードを接続した方が良いでしょう。