VHFゲルマラジオ

VHFゲルマラジオ
VHFゲルマラジオの外観。エアバリコンの回転軸に触れると
ボディエフェクトがあるので、大きなつまみを使用しました。

一般にゲルマラジオといえば、中波(MF、Medium Frequency、300〜3,000 kHz)に分類されるAM放送(531〜1602kHz)を受信するのが相場です。これに対し、FM放送(76〜90MHz)は、超短波(VHF、Very High Frequency、30〜300 MHz )に分類されます。VHFはFM放送以外にも、アマチュア無線(50MHz帯、144MHz帯)やエアバンド(航空無線)などの業務無線のほか、テレビ放送(地上アナログ波、1〜12ch)などで利用されています。ゲルマラジオも十分な信号強度が得られれば、周波数変調(FM)も受信可能なことから、VHF帯のFM波を受信するゲルマラジオを試作してみます。

VHF−FMの同調回路と復調回路

VHFであろうが、FMであろうが、ゲルマラジオの基本は同じであり、アンテナで受けた電波を同調回路で選択し、検波(復調)回路で音声信号化した後、出力回路のイヤホンを鳴らすことに、なんら変わりはありません。

回路図
VHFゲルマラジオの回路図。アースの実態は、イヤホンジャックを
アルミケースに固定したことによるシャーシアースです。

コイルの製作状況
コイルの自作と位置調整には、UM-4を利用しました。

同調コイル(L2)は、直径1.0mmのスズメッキ線を単四乾電池(UM-4)に密着して5回巻きつけ、長さを約1cmに整えたものを使用しています。20pFのエアバリコン(ミゼットバリコン)と組み合わせたところ、65〜140MHzをカバーしました。ちなみにコイルを8巻にすると49〜110MHzをカバーしたので、50MHz帯(アマチュア無線の6mバンド)を受信対象のメインにするならば、10巻前後で良いでしょう。アンテナコイル(L1)にはウレタンエナメル線(UEW)を使っていますが、これはアンテナコイルと同調コイルが接触してショートすることを嫌ったためでしたが、線材の直径が1.0mmもあるとコイルもしっかり自立するので、心配はいらないでしょう。

復調回路はフォスターシーレーです。使用したゲルマニウムダイオードは1N60で、AM放送の検波で使用するものと同じです。もし、アマチュア無線などのAM(振幅変調)を受信するならば、中波放送の場合と同じ通常の検波回路を使用すればよいでしょう。この場合、FM(振幅変調)もスロープ検波として復調可能だと思われます。

VHFゲルマラジオ
配線は立ラグ板を2つ使用
VHFゲルマラジオ
大きなアルミケースに余裕を持って配置
VHFゲルマラジオ
FMトランスミッターを使用した復調実験の様子。ちゃんと復調してくれます。

ゲルマラジオ版「FMワイドバンド受信機」

VHFゲルマラジオ
本格的なアンテナであれば、本機の受信距離も
少しは延びるでしょう。

扱う周波数が高くなり、VHF帯の中央付近になると、集中定数回路による同調は難しくなり、復調も一般的なゲルマニウムダイオードだと動作が怪しくなってきます。また、ゲルマラジオによる受信には十分な信号入力が必要であるため、現在のバンドプランも考え併せると、放送受信が目的ならば、受信の上限は100MHz程度、アマチュア無線器の送信モニターに利用するならば150MHz程度までが、それなりに受信できる上限なのでは?と心象を持ちつつあります。

日本のFM放送は76〜90MHzですが、海外のFM放送は60MHz帯や87.5〜108MHzが使われており、このVHFゲルマラジオも現地へ持ち込めば受信できるだろうと考えています。ゲルマラジオ版のFMワイドバンド受信機として受信範囲を広げるならば、バリコンの容量を増やせば可能になりますが、広帯域化するほど同調操作も微妙になるので、受信範囲は出来るだけ的を絞って設計したほうが良いでしょう。

(←限界が見えてきた受信成果については、テレビ音声もゲルマラジオで受信したいをご覧下さい)