ボード交換式ゲルマラジオ

ゲルマラジオの高性能化として、同調コイルに注目する場合が多いようです。 同調回路の性能はQと呼ばれる値で評価されますが、この場合、構成部品のバリコンやコイルもQで評価されます。 一般にバリコンのQは高いのですが、特にエアバリコンのQは十分高いと言われています。 そのため、市販品をそのまま使用する例が多く、可動部品であるバリコンを自作する猛者は、かなりの少数派です。 逆に、コイルのQは玉石混交であり、Qの高いコイルを自作することで、ゲルマラジオの高性能化に挑む人は多いようです。 コイルのQを高くするには色々な条件がありますが、コイルの大きさは重要な要素の1つです。 今回は直径75mmの円筒に、線径1mmのUEW(ポリウレタン銅線)を60回巻いて、約200μHのソレノイドコイルを自作しました。 さらに、アンテナ回路の性能を最大限に引き出すため、コイルに12箇所のタップを設けて、ロータリースイッチで切り替えます。 また、出力回路(クリスタルイヤホン)へ最も適したインピーダンスで出力するため、同じくロータリースイッチで切り替えます。 12段階の細かな切り替えは、どのようなアンテナ回路やイヤホンを使用することになっても、その条件内で、最善な受信状態に調整が期待できます。

また、ゲルマラジオの高性能化は、検波回路の工夫にも及びます。 代表的な方法として、倍電圧検波回路を採用する例が多いのですが、本来は受信状況に合わせて、使用するコンデンサーの容量を調整することが必要?と思われます。 さらに3倍、4倍などの多倍圧検波も興味をそそられますが、管理人CRLにとっては不明な点も多く、色々と実験する必要があり、セットを組んでは壊す手間が発生します。 このほか、当サイトでは無電源ラジオの試作もありますが、性能の比較検討には同じ同調回路を使用することが好ましく、毎回コイルを製作することは差し控えたい事情があります。

そこで、これらの事情を効率よく解決する方法として、検波回路や無電源回路を組み込んだ基板を容易に交換できるように、コネクターに挿し込む方法を採用します。使用するユニバーサル基板は、サンハヤト製コネクター併用基板「UK-10P-67」、コネクターはKEL株式会社製カードエッジコネクター「3250-010-001」を選びました。ボード(基板)を交換することで、性能のパワーアップや機能チェンジをするような感覚で使えると思います。

回路図
ボード交換式ゲルマラジオの回路図

細かなタップ調整で最適な受信

ゲルマラジオ
上段のタップ切り替えは、右がアンテナタップ、中央が出力タップ、
下段の中央は同調つまみ
ゲルマラジオ
全体の組み立てはバラック

実験的な使い方を視野に入れているので、全体の組み立てはバラックにしました。 木材は13ミリ厚の集成材、パネルは2ミリ厚のアクリル板です。 コイルの巻き枠は、ウェットティッシュの容器です。この容器は100円均一ショップで売られていたもので、包装用フィルムが巻かれている箇所に段差があり、コイルを巻くのに都合がよい形状です。このコイルに360pFのエアバリコンを組み合わせて使用します。 一台目の基板は、ダイオード1個と抵抗器1個のベーシックな回路にしました。

さて、アンテナタップの切り替えは、HOTに近づけるほど感度が上がるため音量は増えますが、選択度は下がるため混信します。逆にGNDに近づけると感度は下がりますが選択度が良くなります。混信が気にならない程度にタップを切り替えて調整します。 アンテナが長い場合は混信しがちなのでGNDに近づけ、短い場合は音量が不足気味なのでHOTに近づけると良くなります。 放送局によって、最善なアンテナタップと出力タップの組み合わせは異なります。 ところで、昼間は地元AM局が受信できますが、タップをよく調整してみると、夜間は他の放送局も聞こえます。 この点は、もう少し調べて判明できればと思います。

ゲルマラジオ
裏側の状況
ゲルマラジオ
コネクタから抜いた基板
ゲルマラジオ
コイルの直径75ミリ、長さ63ミリ

短波受信が対応可能に

このゲルマラジオは、バリコンの容量可変によって同調周波数を変化させています。 さらに、同調コイルのHOTとTAPをショート(短絡)させることでインダクタンスも変化させて、受信範囲をより広げることを考えました。 このバージョンアップは一台目の基板に、スイッチを1つ取り付けるだけで完成です。 新たに取り付けたスイッチをONにすると、出力タップの切り替えスイッチが、インダクタンスの切り替えスイッチに変化します。 約200μHのインダクタンスが最小2μH程度まで切り替わることで、中波から短波(0.6〜20MHz)をフルカバーすることになります。

約19mの水平部を持つワイヤーアンテナを接続していると、日中はラジオNIKKEIが、夜間には海外の日本語短波放送など6局前後が受信できました。 受信範囲が広いものの、大電力局しかキャッチできないので、同調は比較的合わせやすいです。 それでも大電力局同士のため夜間は混信気味ですが、アンテナタップの調整も含めると、混信せずに受信できる局もありました。 さすがに、ゲルマラジオは増幅器のAGC(オート・ゲイン・コントロール)が無いため、フェージングの影響がハッキリと音量の増減に表れます。 フェージングは聞きにくいのですが、逆にこれが短波受信の醍醐味につながっています。
(2007/08/18追記)

ゲルマラジオ
短波受信化の基板回路図
ゲルマラジオ
バージョンアップした1枚目の基板