FMゲルマラジオ
現在使用されているFMラジオの多くはスーパーヘテロダイン式と呼ばれるもので、受信した76〜90MHzのFM放送を、10.7MHzなどの中間周波数に変換、増幅した後に復調する仕組みです。 復調とは、音声信号によって変調された信号から、元の音声信号を取り出すことです。 つまり、FM(周波数変調)の復調は、AM(振幅変調)の検波に相当しており、AMの復調を特に検波と表現しているのです。 代表的なFMの復調回路(周波数弁別回路)として、「フォスターシーレー」「レシオ・デテクタ」と呼ばれる方式があります。 これらの復調回路自体は、ダイオードを2本使用した電源が不要な回路です。 そこで、76〜90MHzのVHF−FM波を同調し、そのまま復調してしまうFMゲルマラジオを試作しました。
FMゲルマラジオの回路図
復調回路はフォスターシーレー方式としました。 これはレシオ・デテクタより2倍の出力電圧が得られることを重視したものです。 使用するダイオードは1N60で、AMラジオで使うゲルマニウムダイオードと同じです。
使用するバリコンは、スーパー式AMラジオ用の親子ポリバリコン(容量が異なる2連のバリコン。トリマー付き(回路図では記載省略)で、実測値は155pFと72pF)を直列にすることで、49〜6pFの可変範囲とします。 更に、10pFのセラミックコンデンサーを直列にして、80MHz用のFCZコイルと組み合わせることで、76〜90MHzを中心に前後も含めてカバーする予定です。 ちなみに、FCZコイルには5,7,10mm角のサイズがありますが、7mm角のピンピッチはユニバーサル基板にほぼ合い、10mm角も45度回転させると、ユニバーサル基板の穴に合います。 今回、80MHz用のFCZコイルについてQを比較すると、7mm角のQ値が大きいので、7mm角を使用しました。
ゲルマラジオもVHF帯の周波数を扱うことになると、冗長な部品配置では浮遊する容量やインダクタンスの影響を受けやすくなるはずです。
実はVHF帯のラジオは初挑戦のため、このあたりの案配が良く分からないことから、ユニバーサル基板にバリコンも取り付け、同調回路を短めに配線しました。
ユニバーサル基板にポリバリコンも取り付け。
ダイヤルは中波の目盛り、そのままです(笑)
基板裏面の様子。色々と部品交換した影響で
ハンダ付けはぐちゃぐちゃです(恥)
おっ、聞こえる! でも、ダメ?
まず、試作品の作動確認を目的として、FMトランスミッターが出力するFM波を受信できるか予備実験します。
実験には、FMトランスミッターを内蔵したMP3プレーヤー(株式会社グリーンハウス製 GH-KANA)を使用しました。
この製品は、ヘッドホン出力端子のコモンからFM電波を出力する構造で、出力周波数76〜90MHzを0.1MHz単位で設定可能、音量調節の操作ボタンで電波の出力も増減できる特徴があります。
アンテナを直結状態にして、周波数を76.0MHz、音量調節を最大にしてロック調の音楽を鳴らします。
すると、クリスタルイヤホンがジャンジャカ鳴り、バッチリ受信できました。
「FMの受信は難しい」と思い込んでいたので、うれしい反面、ちょっと拍子抜けしたほどです。
音質は普段聞いているAM局と比べると、ちょっとクリアーな感じです。
FMトランスミッターの出力を弱めてバリコンのつまみを回すと、同調点に近づくにつれて、無音だったイヤホンから僅かに「シャー」という音が聞こえ始め、同調点にほぼ合うとふわっと音声が出てくる感じで受信しました。
FMトランスミッターの出力周波数を変更して確認したところ、同調範囲はFM放送帯76〜90MHzを全域カバーしていました。
しかし、浮遊容量(ポリバリコンとFCZコイルの距離による影響)なのか、設計時に部品の測定誤差があったのか、同調周波数が計算値より下にシフトしており、上限がぎりぎり90MHzを受信する結果でした。
アンテナを直結すれば当然、音量・音質に文句なし。
上限90MHzを受信するため、トリマーも調節することに。
2つある、マイナスのねじ頭がトリマーです。
予備実験がうまくいったので、本命であるFM放送局の受信にチャレンジします。 まず、AMの受信で使っているワイヤーアンテナ、水道管アースを使用しましたが、まったくダメ、受信できません。 次にテレビの受信で利用している八木アンテナが流用できないかと思い、部屋にあるテレビ端子に接続すると、やっぱり、ダメ。 地元のTVとFMの放送塔はほぼ同じ場所にあるため、もしかと期待したのですが、TVとFMでは周波数が異なるし、混合器や分配器でFMがカットされていても、不思議ではありません。 こうなると、利得の高い専用のFMアンテナが必要です。 自作するにしても、市販品を購入するにしても勉強不足のため、中途半端ですが、今回の受信実験はここで中断とします。
ところで、復調用のコイル(68μF)、結合コンデンサー(22pF)の値や結線は暫定的なもので、FM放送帯の受信にベストなのか把握していません。 並列接続している抵抗器とコンデンサーの値については、あまり限定されず、100〜2000pF、5k〜20kΩでの聴覚的な違いは、クリスタルイヤホンで聞く限り、それほど感じられませんでした。
今回、FM放送は受信できませんでしたが、FM放送帯の同調と復調を確認できたので、アンテナや電界強度などの受信条件が十分に整えば、FM放送の受信は可能だと思います。 ただし、この受信条件はかなりシビアで、なかなかクリアーできないかもしれません。 FMゲルマラジオを試作される場合は、作動確認のため、FMトランスミッターの使用をお勧めしたいと思います。
外部アンテナ接続を2端子に変更
後日、λ/4のアンテナを接続し、放送塔に近接した場所において、FM放送の受信に成功しました。 そこで、受信距離を延ばすため、利得のあるアンテナを接続できるように、アンテナの接続端子を1つから2つに変更しました。 これで、ダイポールアンテナ、八木アンテナなどの接続が可能になります。
なお、回路変更後の受信結果は、続・ゲルマラジオでFM放送を受信したいをご覧下さい。
(2007/10/14追記)
FMゲルマラジオの回路図(一部変更)
黒のアンテナ端子を追加