アンテナ回路3
電波伝播に深い関係がある、周波数の区分と電離層についての説明です。
周波数の区分
電波は波のように伝わる性質があります。 そのため、低い周波数は直進性が弱く、山やビルなど障害物の裏側に回り込むこと(回折)が出来ますが、高い周波数は直進性が強く、回折しにくくなります。 つまり、周波数が高くなるほど、直接見通せる範囲にしか、電波は届かなくなります。
この基本的な波の性質と、次に説明する電離層の影響を知ることで、おおよその電波伝搬の様子が把握できます。 電波伝搬の違いを考慮し、区切りの良い値で、周波数は区分されています。
名称 | 記号 | 周波数 | 波長の範囲 |
---|---|---|---|
超長波 | VLF (Very Low Frequency) | 3〜30 kHz | 100〜10 km |
長波 | LF (Low Frequency) | 30〜300 kHz | 10〜1 km |
中波 | MF (Medium Frequency) | 300〜3,000 kHz | 1,000〜100 m |
短波 | HF (High Frequency) | 3〜30 MHz | 100〜10 m |
超短波 | VHF (Very High Frequency) | 30〜300 MHz | 10〜1 m |
極超短波 | UHF (Ultra High Frequency) | 300〜3,000 MHz | 1〜0.1 m |
マイクロ波 | SHF (Super High Frequency) | 3〜30 GHz | 10〜1 cm |
ミリ波 | EHF (Extra High Frequency) | 30〜300 GHz | 10〜1 mm |
電離層の影響
私たちの上空には、目には見えませんが電子密度が濃い層が存在し、電波を反射するなどの性質があります。 この電子密度が濃い層を電離層といいます。 電離層は太陽の放射エネルギーなどによって、主に酸素の分子や原子から電子が飛び出す現象(電離)が生じることで、飛び出た電子が自由電子として多数存在している層です。 このため、太陽の影響を受けるので、電離層は季節(夏と冬)や時刻(昼と夜)によって、存在する高度や電子密度が変化します。 この季節や時刻による変化が、電波伝播に影響を及ぼしているのです。
主な電離層は次のとおりです。
- D層
- 長波を反射し、中波と短波は減衰して突き抜ける電離層です。高度は70〜80kmで、昼間は存在しますが、夜間は消滅します。
- E層
- 長波と中波、低い周波数の短波を反射する電離層です。高度は季節や時刻に関係なく約100kmです。夜間の長波はE層で反射するので中波と似た伝わり方をします。
- F層
- 短波を反射する電離層です。高度は200〜400kmに分布し、昼間はF1層、F2層の2層に分かれますが、夜間は両者が合体、もしくはF1層が消えてF2層のみになります。
- スポラディックE層
- 通称「Eスポ」、超短波(VHF)を反射する電離層です。高度はE層と同じく約100kmです。局地的に突如発生する電子密度が濃い電離層ですが、状態が不安定なため、しばらくすると消滅してしまいます。
中波の場合を考えると、昼間はD層で減衰するので電離層における反射はほとんどありません。昼間の中波は、地表に沿って伝わる電波を受信するため、近距離の放送しか受信できません。しかし、夜間の場合はE層で反射するので遠距離まで伝わるようになります。
VHF以上の電波は電離層を全て突き抜けるので、人工衛星との通信や電波望遠鏡などで利用されています。ただし、Eスポが発生した場合、VHFが反射されるため、普段は到達しないはずのテレビ(VHFのアナログTV)やFM放送の電波までも受信(混信)し、映像や音声が乱れる影響を受けます。