検波回路3

半導体とダイオードの動作原理、整流と検波の説明です。イメージ的に大まかな説明をさせていただきます。

p型半導体とn型半導体

まず、物質を構成している元素の話から始まります。 元素は、陽子と中性子で構成された原子核1個と、原子核の周囲を一定の軌道で運動している電子で構成されています。 元素の種類や化学的性質は、構成している陽子、中性子、電子の個数で決まります。

電気の正体(電気量の最小単位)は陽子と電子であり、陽子はプラス、電子はマイナスの源です。 通常、元素は同じ個数の陽子と電子を持つため、プラスとマイナスが打ち消しあって、電気的に中性です。 しかし、何かの拍子(物理学的、化学的な各種の作用)で、元素から電子が離れるとプラスに、取り込むとマイナスに帯びることがあります。

ここからが本題です。 純粋なゲルマニウム元素に、ごく微量の不純物(他の元素)を混ぜると、不純物の種類によってゲルマニウム元素の電子が増減し、半導体素子として利用できるようになります。 電子が減った半導体をp型半導体、電子が増えた半導体をn型半導体といいます。 n型半導体は電子の移動で電気が伝わり、p型半導体は電子が抜けた箇所(ホール、正孔)の移動で電気が伝わります。

実際には、p型半導体も電子が移動しており、移動していた電子がホールに収まると、収まった箇所が電気的に中性となる換わりに、その電子の移動元がホールになります。 この状況が、電子が移動したのではなく、あたかもホールが移動しているように見えることから、p型半導体についてはホールの移動で電気が伝わるものして扱われています。

電子とホールは電流の担い手と考えられ、この2つをキャリアと言います。ゲルマニウムのほか、シリコンなども微量の不純物でp型とn型の半導体として利用されます。

ダイオードの動作原理(接合型)

電流はプラスからマイナスへ流れると定義されています。 このとき、実際の電気の源である電子は、マイナスからプラスへ移動します。 ホールについては、プラスからマイナスへ移動すると扱います。

さて、半導体ダイオードの正体は、p型半導体とn型半導体を接合した部品です。 接合した面では、p型のホールとn型の電子が接するため、両者が結合して消滅することで、空乏層と呼ばれる領域が発生し、これ以上の結合が止まります。 つまり、空乏層はキャリア(電子、ホール)が存在しない領域なので、電流の流れは生じません。

ここで、p型半導体にプラス、n型半導体にマイナスの電圧を加えます。 すると、p型のホールはプラス極から送り込まれるホールに反発し接合側へ、n型の電子もマイナス極から送り込まれる電子に反発して接合側へ移動します。 そこで、空乏層の領域が薄くなって、互いに接近したホールと電子によって、再び結合が行なわれます。 これらの現象が連続することで、電流の流れになります。

次は逆に、p型半導体にマイナス、n型半導体にプラスの電圧を加えます。 すると、p型のホールはマイナス極の電子にひきつけられて接合部から離れ、n型の電子はプラス極のホールにひきつけられて接合部から離れます。 このため、空乏層の領域も厚くなっていきます。 したがって、接合部で電気的な交換が無いため、電流が流れないのです。

ダイオードの動作原理(点接触型)

点接触型のゲルマニウムダイオード
点接触型のゲルマニウムダイオード。
外観に帯(画面では2本の赤色)が表示されている側を
「カソード」、反対側を「アノード」と言います。ダイオードは
アノードからカソードへ、順方向の電流が流れます。

ダイオードの基本構造は、半導体と半導体の接合(pn接合型)のほか、半導体と金属を点接触したものがあります。 例えば、ゲルマニウムダイオードもpn接合のほかに、n型半導体のゲルマニウムに導体のタングステンを点接触させた構造を持つ製品があります。

半導体と金属を接合させた場合、その材質や接合状態など一定条件が整うと、接触させた箇所にショットキー障壁が発生します。 ショットキー障壁とは、キャリアの流れを防ぐ山のような存在で、n型半導体の場合、金属側から半導体へは上り坂の斜面のようになっており、半導体から金属側へは垂直な絶壁のようになっています。 このショットキー障壁は、外部から電圧を加えると山の形状が変化し、金属側にプラスを加えると山の高さが低くなり、斜面も緩やかになるので電子が移動しやすくなりますが、逆にn型半導体にプラスを加えても垂直の絶壁はそのままなので、電子の移動を妨げます。 ショットキー障壁も、pn接合の空乏層と同じように、電流の流れる方向を制限します。

整流と検波の違い

このようにして、ダイオードは一定の方向に電圧が加わった場合(アノードにプラス、カソードにマイナス)のみ電流が流れ、逆方向には流れません。 電流が流れる方向を順方向といい、電流が流れ始める最小の電圧を順方向電圧といいます。 ダイオードの作用(順方向のみ電流が流れる作用)を利用し、その目的が、交流を直流に変換することを整流といい、電波から音声信号を取り出すことを検波といいます。

整流用のダイオードは、電力供給のため直流電源を得るので、一般に高電圧、大電流に耐えられる特性が望まれます。 シリコンダイオードは、100V以上の電圧でも整流できる特性を持つ製品が多数あります。

検波用のダイオードは、高電圧・大電流に耐えられることより、弱い高周波信号であっても確実に検波できる特性が求められます。 ゲルマニウムダイオードは、順電圧方向が約0.2ボルトと低いので、微弱な信号でも検波できるのです。



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