出力回路2
セラミックイヤホン(現在「クリスタルイヤホン」と呼ばれて流通している商品)の構造です。古い文献や特に断りが無い限り、クリスタルイヤホンと言えば、セラミックイヤホンのことです。
圧電素子による音響部品
セラミックイヤホンは、圧電素子としてチタン酸バリウム(BaTiO3)などの小さな結晶粒(クリスタル)を焼結したもの(セラミック)が使われています。 チタン酸バリウムのセラミックは、電気的には強誘電体に分類され、高圧の直流を印加すると、結晶内部におけるプラスとマイナスの向きが整列されます。 この整列する現象は分極と呼ばれており、分極処理されたセラミックは圧電セラミックと呼ばれています。 圧電セラミックは、外部から力を加えると電圧を発生させるほか、逆に電圧を加えると大きさが伸び縮みする性質があります。 この伸び縮みを利用することで、電気信号を音に変換することができるのです。

セラミックイヤホンの構造
セラミックイヤホンの発音体は、圧電セラミックに薄い金属板を貼り合わせた構造になっています。 金属板も圧電セラミックの伸び縮みに合わせて振動することで、音を鳴らしています。
構造の実例

壊れたセラミックイヤホンの様子。15年間、よくがんばってくれました。
15年ほど前に購入したイヤホンが壊れてしまいました。 この際ですから、ちょっと観察してみましょう。 ケースの接着部分が外れたことで、発音体が薄い円板であることがわかります。

セラミックイヤホンのケース形状はシンプル。
イヤホン内部の空間は、共鳴や集音の効果を得て音圧が大きくなるように、形状が設計されている?

発音体の表側。耳栓から覗いても、円周部分までは見えません。
金属板は直径20ミリメートル、厚さ0.16ミリメートルでした。 購入時に、僅かだった金属板の腐食が大量発生していました。 今まで気にも留めなかったのですが・・・ちょっとイヤですね。

発音体の裏側。普段は見れない部分。
金属板の裏側には、圧電セラミックが貼り付けられています。 圧電セラミックは薄い円板で、厚さは0.10ミリメートル前後でした。 厚み方向に電気信号を入力することから、片面は金属板を利用しているようです。 セラミックにつながっていた電極は、今回の破損時に外れてしまいました。
【参考】 出力回路3(セラミックとロッシェル塩)