トランス切替BOX

トランス切替BOXの外観
トランス切換えBOXの外観

ハイインピーダンス出力のゲルマラジオで、ローインピーダンスのスピーカーやオーディオ用ヘッドホンを利用する場合、インピーダンスマッチングが不可欠です。具体的なインピーダンス値ですが、スピーカーやオーディオ用ヘッドホンなどは、本体や取扱説明書に公称値が表示されています。これに対し、ゲルマラジオの出力インピーダンスは使用環境や回路構成などに左右され、概ねの傾向は検討できても、具体的な値を事前に知ることは困難です。インピーダンスマッチングの方法として、トランスの利用は有効な方法ですが、最も適したトランスを探すには、色々と交換して試してみる必要が生じます。そこで、トランスの交換実験を行なうための「トランス切替BOX」を製作することにしました。

入力インピーダンスは11段、出力インピーダンスは2段

使用する低周波トランスは、サンスイのトランジスタ用小型トランス"STシリーズ"から選びました。現行品の中から11品を組み合わせることで、ゲルマラジオの出力を一度1kΩに変換した後、改めて8Ωに変換する二段階構成にします。これらのトランスは、2回路12接点のロータリースイッチで切り替えます。入力インピーダンスは11段で0.6〜500キロオームをカバーし、出力インピーダンスは8オームのほか、中間段の1キロオームでも出力できるようにしました。仕組みは単純ですが、配線が多いので取り違えには注意します。ST−24については、メーカー公称の1次側と2次側を逆にして使用しました。

トランス切替BOXの回路図
トランス切替BOXの回路図
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品名インピーダンス巻数比
一次側二次側
ST−72600Ω1kΩ0.74:1
ST−811kΩ10.8:1
ST−241kΩ2kΩ0.7:1
ST−345kΩ1kΩ2.17:1
ST−2010kΩ1kΩ3.16:1
ST−1120kΩ1kΩ4.49:1
ST−1030kΩ1kΩ5.4:1
ST−1550kΩ1kΩ7.07:1
ST−12100kΩ1kΩ10.1:1
ST−16300kΩ1kΩ17.91:1
ST−14500kΩ1kΩ22.4:1

ローインピーダンスの負荷に対してどのトランスが有用なのか、スイッチ一つで聞き比べることが出来るのは便利です。視点を変えれば、どのような使用環境下のゲルマラジオでも、インピーダンスマッチが出来る装置としても活用できるでしょう。

今後、様々な条件下で試用したいと思いますが、まずはループアンテナ式のゲルマラジオに接続してスイッチを回転させたところ、どれか一つだけ極端に音量が大きいのではなく、聴覚的にはなだらかに変化しました。音量の僅かな違いも聞き取りやすく利用価値がありそうです。とりあえず、これで完成としますが、基板(Sunhayato ICB-504)にスペースが少し余っているので、トランスの追加など回路の拡張にも対応できそうです。

トランス切替BOXの基板
11個のSTトランスを基板に取り付けています。
トランス切替BOXの内部
ケースは100円均一ショップで売られていたタッパを利用