安価な教材用バリコン
身近にある安価な材料でバリコンが作れます。
ゲルマラジオを教材として扱う場合、工作が容易であることは、大切なファクターです。 それと同時に、安価であることが強く望まれる場合も多いと思われます。 これらを同時に満たす教材用のゲルマラジオとして、まずは安価な教材用バリコンを試作してみました。 封筒バリコンと硬質カードケース・バリコンを紹介したいと思います。
封筒バリコン
封筒バリコンとは、紙封筒とこれに出し入れする手紙(用紙)に、それぞれアルミホイルを貼り付けて作るバリコンです。 イメージ的には、用紙がローテータ(移動電極)、封筒がステータ(固定電極)でしょうか。
材料は、紙封筒、アルミホイル、両面テープ、ゼムクリップ、用紙、電線です。 全てDIY店で購入できますが、電線は専門店、他は100円ショップでも購入できます。 用紙は、コピー用紙やメモ用紙の様な柔らかい紙ではなく、カレンダーなどで使われている少し硬めの紙が良いでしょう。 用紙を不用な古紙を使って0円とすると、費用は33円台(片面タイプなら30円弱)であり、市販ポリバリコンの1割程度と激安です。 購入方法を工夫すれば、費用はもっと安くなるでしょう。
材料 | 規格例 | 購入価格例 | 消費見積 | 単価 |
---|---|---|---|---|
封筒 | 長形4号、120枚入 | 105円 | 1枚 | 0.875円 |
アルミホイル | 25cm×8m | 105円 | 25cm×0.27m | 3.544円 |
両面テープ | 幅10mm、長さ20m | 105円 | 2.1m | 11.025円 |
ゼムクリップ | 200個入 | 105円 | 2個 | 1.050円 |
電線 | AWG20、長さ10m | 347円 | 25cm×2本 | 17.350円 |
少し硬めの紙 | 使用済みカレンダー等 | 0円 | 8.5cm×25cm | 0円 |
封筒バリコン(両面タイプ)1つ当たりの単価 | 33.844円 |
激安・簡単・不安定の三拍子
両面テープで封筒にアルミホイルを貼り付けます。
製作はとても簡単です。 まず、封筒の周囲と中央に、両面テープを貼ります。 今回の試作では、封筒の片面だけと両面にアルミホイルを貼り付ける2通りを作ります。 ちなみに、両面の場合は、1枚のアルミホイルを折り曲げて、封筒の表と裏に貼りつけ、電気的につながった状態であることが必要です。
アルミは通常の半田付けができないので、ゼムクリップで電線と接続します。 ゼムクリップと電線は、半田付けしておくと、確実です。 製作体験者が低年齢の場合、この半田付けは指導者側で準備しておくと、良いでしょう。
用紙のサイズですが、封筒に対して、幅は少し短く、長さは少し長くします。 用紙にも、両面テープでアルミホイルを貼ります。 通常、用紙の片面だけ、アルミホイルを貼っておけば大丈夫です。
片面と両面にアルミホイルを貼った封筒の様子
半田付けしておけば、断線トラブルの予防になります。
封筒バリコンが完成した様子。用紙を出し入れすると、容量が可変します。
封筒側と用紙側のアルミホイル、ゼムクリップを接触させないように注意。
アルミホイルを貼り付けた封筒に用紙を差し込み、電線を付けたゼムクリップを、封筒と用紙のアルミホイルに接続すれば、封筒バリコンは完成です。 後は、封筒から用紙を出し入れするだけで、容量が変化し、バリコンとして利用できます。
肝心の容量ですが、両面電極の封筒で約530pF、片面電極で約190pFになりました。 容量は重なり合う電極の面積だけでなく、距離でも変化します。 そこで封筒バリコンに本を載せたところ、両面電極の封筒で約1500pF、片面電極で約680pFになりました。
封筒バリコンは費用が安く、作りやすいことが長所ですが、耐久性が劣る短所があります。 もう1つの短所として、容量が不安定なことが挙げられます。 封筒が変形しやすいことや、用いた用紙の厚みで電極の距離が変化するためです。
今回、105円で120枚入りの封筒を使いましたが、これを10〜20枚入りにすれば、封筒の形状は安定性が増し、容量の変化が軽減できるでしょう。 ただし、紙厚が増すことから、容量が少し低下すると考えられます。 その辺は、準備した材料で異なりますから、事前に指導者がチェックしておく必要があります。
両面電極の封筒バリコンは約530pF
本を載せて電極間を短くすると、容量は約3倍にアップ
片面電極の封筒バリコンは約190pF。両面の半分にならないのは、用紙の厚みが
大きく影響しています。電極間隔が不平衡なため、用紙を裏返すと値が変化します。
本を載せると、容量は約3.5倍にアップ
硬質カードケース・バリコン
紙封筒の代わりに、硬質カードケースでバリコンを作ります。
激安が魅力の封筒バリコンですが、形状が安定しないことから、容量が不安定になりがちです。 もう1つ、紙封筒に代わるものとして、ハードカードケース(硬質カードケース)で試作してみます。 材質が紙から塩化ビニールに切り替えたことで、誘電率が増すので、サイズを小さしても大きな容量を得ることが可能です。 ここではB7判の用紙を入れるための硬質カードケースを利用してみます。
B7判用の硬質カードケースは、3枚入りを105円で購入できました。 ただし、紙封筒より厚みが増すため、ゼムクリップによる接続が困難になります。 今回は目玉クリップで挟んで接続させました。 製作単価は約75円と見積もりました。
硬質カードケースの片面だけアルミホイルを貼ったところ、容量は約300pFとなりました。 本を載せても約330pFと一割程度の変化で、市販のポリバリコンには負けますが、封筒バリコンより安定していることが確認できました。 面積はさほど変化しませんが、ケースの厚みは製品で異なるので、容量が前後する可能性はあります。
激安が重要ならば封筒バリコンを、安定性重視ならば硬質カードケース・バリコンをお勧めします。 試作例は容量が直線的に変化しますが、電極の形状を検討することで、周波数直線型、波長直線型のバリコンが作れます。 また、封筒バリコンの場合、しっかり密着させることで、誘電率の仮定が必要ですが、紙の厚みを計算で求めたり、シックネスゲージなど紙の厚みを正確に測定できれば、誘電率を測定する実験も可能です。
容量は約300pFと使いやすい値です。
本を載せると容量が約1割増加します。製作体験用途なら許容できるでしょう。