簡易AM発信器の試作

当サイトの管理人CRLは木造住宅でゲルマラジオを受信できる環境であり、ローカル局の周波数も600kHz台から1000kHz台まで、比較的広範囲に広がっています。ゲルマラジオを楽しむには、それなりに環境が整っていると言えます。しかし、鉄筋コンクリートの家屋や遠距離受信を余儀なくされる条件ですと、ゲルマラジオの受信はかなり困難と言えるでしょう。また、ローカル局の周波数が近寄っていると、自作したゲルマラジオの受信範囲が偏って他の地域では使えない仕上がりになることもありえます。このような場合でもゲルマラジオを楽しむ解決方法の1つとして、高周波発振器、RFオシレーターを使用することで、ゲルマラジオの受信チェックなどに利用することが考えられます。

簡易AM発信器の回路図

インターネット上には、発振器の回路図が多数ありますが、発振回路の理論説明用であったり、FMワイヤーレスマイク(FMトランスミッター)の作例、アマチュア無線機の製作、発振専用ICを利用した作例で大半を占めるようです。中波帯の周波数で、音声信号を振幅変調できるものは少数です。これは単に需要がないのか、高品質でまともなモノを製作することが意外と困難なのかもしれません。管理人自身あまり詳しくないので(汗)、部品数は1つでも少なくして、トランジスターは1石で、製作が簡単で費用が安いものを手がけることにします。

意外とAMワイヤレスマイクの回路図は少ない?

参考にしたのは「ブレッドボードラジオ」に掲載されている学研電子ブロックの回路集No.10「1石ワイヤレスマイク」です。これはクリスタルイヤホンをマイクの代わりに使う1石ワイヤレスマイクです。まず、マイク代わりのイヤホンは取り除き、変調トランスとして山水のST−32を組み込み、オーディオ装置の音楽を入力できるようにします。バーアンテナをOSCコイルに変更し、固定バイアスから自己バイアスに変更してみました。

参照先と同じようにブレッドボード上で回路を組み、部品定数を調整して、作動を確認します。

簡易AM発信器の作動確認状況
作動確認にブレッドボードを利用しています。
簡易AM発信器の作動確認状況
OSCコイルはICソケットを利用してブレッドボードに刺しています。

デジタルテスターで発振周波数を測定しています。ポリバリコンはストレート用ですが、トリマーが付いているタイプです。まずトリマーを調整し、その後OSCコイルのコアを回転させることで、530kHzから1600kHzまで発振できるようになりました。最近は、受信周波数をデジタル表示できるラジオも多く市販されていますので、これらのラジオでも周波数を確認することができます。

簡易AM発信器の周波数確認状況
発振最低周波数は527kHz
簡易AM発信器の周波数確認状況
発振最高周波数は1630kHz

肝心の音質ですが、オーディオ装置のヘッドホン端子をST−32の8Ω側に接続して試聴したところ、さすがに高音質とは言えません。表現が難しいのですが、フェージングがない遠距離中波局を聴いている様な感じなのです。1石で部品数も最低限で、部品定数の追い込みも厳密ではないので、無理も言えないところです。この辺りは同じトランスミッターでもFMが有利です。また、過入力になると音が割れるので、オーディオ装置側のボリュームでコントロールする必要があります。

ブレッドボードによる作動確認状況
ゲルマラジオは直接結線すれば受信できます。

この簡易AM発信器はアンテナを接続しなくても、トランジスターラジオならば周囲1.5m程度で受信可能です。ゲルマラジオの場合は直接、出力を接続すればイヤホンで受信できます。ただし、近くに寄せすぎると異常発振を起こすので、その場合は距離を取る必要があります。また、参照先のサイトでも触れられていますが、本機もボディエフェクトがあるので、気になるようでしたら金属ケースに入れるとベターです。

ユニバーサル基板での実体配線例

簡易AM発信器の実体配線図
ユニバーサル基板での実体配線例。ST-32は色別の被覆ですが、PasSの規格上、同一色です。
青は裏面配線、緑は裏面被覆配線、橙は表面被覆配線です。

ユニバーサル基板上での部品配置を考えてみました。

OSCコイルは7mm角のものです。正しく結線しても発振しない場合、OSCコイルのピン配置規格が異なるかもしれません。この場合は、1次側又は2次側のいずれかを逆に接続して試してください。試作例では紹介している結線で発振します。また、トランジスターは向きを間違えると発振しませんので、こちらも注意してください。

(今回はここまで。続きは後日、改めて製作することにします。)

音声信号と電源をPCに求めて製作

管理人CRL自身の使い勝手を考えた結果、この発信器に必要な音声信号と電源をパソコンから供給することにしました。つまり、USBバスパワー駆動のパソコン周辺装置的な位置付けになります。これなら周波数1000Hzのテスト信号やMP3などの音源も自由に入力できるし、乾電池の準備からも解放されます。

USBの供給電圧は5Vですので、R2とR3で分圧します。発信器の消費電流は0.03mA程度ですが、USBからは7mAと十分に電流を流しています。最も古い規格のUSB 1.0でも余裕で使えます。シールド対策はしないので効果は期待できませんが、それでも無いと気持ちが悪いので、ノイズ対策としてC3とC4を入れました。USBケーブルは、 部品取りとして99円で購入していたUSBマウスを分解して転用しました。

USBバスパワー駆動の簡易AM発信器の回路図

USBバスパワー駆動の簡易AM発信器の実体配線図
基板はサンハヤトのICB-90。なお、ポリバリコンは表裏逆転して実装しました。
USBマウスを分解した状況
部品取りとして購入していたマウスは、USB1.0規格の古いもの。
USBケーブルの結線状況
VBUSの+5V、GNDを確認
USBバスパワー駆動の簡易AM発信器
本体を2個100円のタッパに収めました。コード長はいずれも約70cm。
USBマウスのブッシングは切り取らずに再利用。
USBバスパワー駆動の簡易AM発信器
ノイズ対策として申し訳程度にトランスのコードをツイストしていますが、
性能向上にはバッファ回路、ベタアース、金属板のシールドとか必要。

USBバスパワー駆動で使用することや、単純な実験用途のレベルは満たすので個人的には気に入っておりますが、研究用の信号源を想定すると無理があります。1石の簡易版であるため、実際の放送局と比較すると音質が劣りますし、ハムやボディエフェクトも発生します。それでも簡単に作れ、とりあえずゲルマラジオに電波を注入できれば良いという作品に仕上がりました。

なお、念のため注意喚起させていただきますが、弱いといえども発信器ですので、パソコンに到達した電波やUSBケーブルの誤結線によって、パソコンが誤作動したり壊れたりする可能性はゼロではありません。試される場合は個人の責任でお願いします。