ゲルマラジオでヘッドホン、スピーカーを鳴らす

スピーカーの鳴るゲルマラジオを目指し、アダプターを製作します。 ただし、アダプターに電源を使わないことを条件にします。 ゲルマラジオでスピーカーを鳴らすため、大きく3つの問題点があると考えました。

  1. 音声信号が微弱である
  2. ゲルマラジオの出力インピーダンスとスピーカーの入力インピーダンスが異なり、信号の伝達ロスが生じる
  3. クリスタルイヤホンと異なり、スピーカーの効率は良くない

まず、1番目は受信環境(電界強度)、アンテナ回路の具合、ゲルマラジオ本体の性能に係わる問題です。今回のアダプター製作とは切り離して考えることにします。

次に、2番目はトランスを用いたインピーダンス変換で対応できます。ゲルマラジオの出力インピーダンスは数キロ〜数百キロオームであるのに対し、スピーカーのインピーダンスは8オーム程度しかありません。したがって、使用するトランスのインピーダンスは、一次側が数キロ〜数百キロオーム、二次側が8オームになります。しかし、管理人はこのような規格の製品を知らないので、今回は山水のST−34とST−81を組み合わせて使用することにしました。

最後の3番目は、できるだけ効率の良いスピーカーを選ぶしか方法はありません。傾向として、小口径より大口径、スピーカーのユニット単体よりエンクロージャー(スピーカーボックス)に収めたもの、トランペット型(ホーン型)の効率がよいと思われます。効率の良いスピーカーとして、真空管ラジオに使われたクリスタルスピーカーがありますが、現在は製造されておらず、現存品の入手も絶望的です。そこで今回は、前面が222×179mmのトランペット型スピーカー(TOA株式会社製ホーンスピーカSC−710A)を準備しました。

アダプターの回路図
アダプターの回路図

以上の考えでアダプターを試作します。回路図のとおり、2つのトランスを使用することで、入力インピーダンス5キロオーム、出力インピーダンス8オームのアダプターを製作しました。スピーカーと同じく、ゲルマラジオでは普段使わない、オーディオ用ヘッドホンも駆動対象としました。モノラルジャックがスピーカー用、ミニステレオジャックがヘッドホン用です。仮に、ヘッドホンのインピーダンスが方耳で16オームの場合、並列接続すれば8オームとなるので、インピーダンスはマッチします。 以上の回路を、プラスチックケース(タカチ電機工業製SW-85、W60×H40×D85)に収めました。

アダプターの外観
アダプターの外観
アダプターの内部
アダプターの内部。6Pの立ちラグを使用。

スピーカーの鳴るゲルマラジオ

ゲルマラジオでスピーカーが鳴る!
ゲルマラジオでスピーカーが鳴る!
ヘッドフォンでも聞こえます
ヘッドフォンでも聞こえます

製作したアダプターを、ボード交換式ゲルマラジオに接続し、タップを調整していくと、徐々にスピーカーが鳴りました。 周囲が少しでも騒がしいと聞き取れない音量ですが、部屋が静かであれば、ホーンスピーカーの効果で5m離れても放送内容がだいたい聞き取れます。 僅かな音量であるものの、電源が不要なゲルマラジオでスピーカーが鳴るのはうれしいものです。 ただし、スピーカーで受信できた放送局は、ローカル3局中の1局(5kW局、約14km)だけでした。

次に、密閉ダイナミック型のヘッドホン(オーディオテクニカ製ATH−T3)を接続したところ、こちらはローカル3局全てが聞こえます。 クリスタルイヤホンに近い音量が感じられます。両耳で聞けるため、普通のラジオと同じような感覚で放送が楽しめます。 実のところ、ヘッドホンのインピーダンスは32オーム(並列接続で16オーム相当)なため、ミスマッチしています。その影響で、スピーカーとヘッドホンでは、タップのベストポジションは異なりました。

品名インピーダンス巻数比
一次側二次側
ST−11 20kΩ1kΩ4.49:1
ST−12100kΩ1kΩ10.1:1
ST−14500kΩ1kΩ22.4:1
ST−345kΩ1kΩ2.17:1
ST−811kΩ10.8:1

今回、ST−81に併用するトランスとして、ST−11、12、14も試してみました。管理人の受信環境下でボード交換式ゲルマラジオにスピーカーを接続した場合は、ST−34の併用が最も音量が大きいようです。なお、ループアンテナを使用したゲルマラジオでも、極めて小さいながらスピーカーは鳴りました。大型密巻きのループアンテナを使用した場合、ST−12の併用が最も音量が大きくなりました。トランスやスピーカーの選定は、絶対にこれがベストというものはなく、色々と試してみることをお勧めします。